十九時の予約。
古民家の扉を開けると、ホールの方がひとり、厨房にシェフがひとり。先客がひと組いて、私が二番手だった。
カウンターでもテーブルでも、お好きなところにどうぞ、と言われた。
迷わずカウンターにした。シェフの手元が、いちばんよく見える席。
奥で、薪が燃えていた。
この日は満席になると聞いた。
連れは、以前同じ職場にいた、年の離れた同僚。食べることが好きな人。仕事が押していて、まだ着かない。そして私たちには、二十時半には店を出なければならない事情があった。
同僚を待つ時間に、料理のメニューを見た。ドリンクのメニューも見た。
野菜もジビエも、季節で変わっていくらしい。この日のジビエは、鴨、ヒグマ、対馬の猪。
まだ何も出てきていないのに、ここは好きだ、と思った。好きな店に出会ったときの、いつもの感覚。
シェフに事情を伝えて、先に始めさせてもらうことにした。ひとりで、フライング。
彼女の好みは、魚が好きということしか知らなかった。それでも勝手に注文した。
一品目は、かつおの炙り。
ソースは、ローストしたアーモンドとトマト、バジル、チーズ。たっぷりつけて食べるのがおすすめです、と言われた。
イタリアンなのかもしれない。でも、この店のおいしさに、ジャンルはあまり関係がない気がした。
二品目は、クレソンを十秒だけ薪で焼いたもの。やぎのミルクでつくったシェーブルチーズと一緒に。火が通ったばかりの緑に、真っ白がのっている。
彼女が合流したのは、ちょうどこの皿が運ばれてきたころだった。
そこからは早かった。
お店のおすすめだというフォカッチャは、添えられたローズマリーの香りのバターと、よく合った。
コーンは、バターを塗りながら焼いてくれた。火の前で、少しずつ。薪焼きの焦げ目と、バター。よく合った。
対馬の猪で、タイムオーバー。
急いでいることを、お店はちゃんとわかってくれていた。料理を出す間合いも、声のかけ方も。急かされている感じは一度もないのに、気がつけば、時間通りに終わっていた。
彼女とは、結局ずっと仕事の話をしていた。中身の濃い話ばかり。そのあいだにも、次の料理が来るたびに、ふたりで「おいしい」と声をあげていた。勝手に頼んだものだったけれど、よかった。
一時間半では、やっぱり足りなかった。
この建物は、百二十年前からここに建っているのだという。
当時ここで暮らしていた人たちに、お礼を言いたいような気持ちになった。こんなに素敵なお店で、ゆっくりと、料理と会話に集中できたことを。
こういう縁を、いちいち感じていたい。
店を出るとき、ふたりで「絶対また来ます!」と言った。そのまま、次の予定へ向かった。
そして、次は誰と来よう。
基本情報
石井商店。(いしいしょうてん)
住所:大阪市北区浮田1-1-15
最寄り駅:天神橋筋六丁目駅 13番出口 徒歩約3分(阪急千里線/大阪メトロ堺筋線・谷町線)
営業時間:17:00〜翌0:00(L.O. 23:00)/定休日なし
予約がおすすめです
公式サイト:石井商店。

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